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何もない原っぱに大きい穴が開いている。
そこを覗く人に聞いてみた。

「見てください。底が見えませんよ。試しに何か放り込んでみようかと
 石を放り込んでみたんですが、なんと底にぶつかる音すら聞こえないじゃありませんか」

どれどれと私も石を持った。
しかしどうも穴を覗いていた人にとってその石はさっき自分が投げ入れた石と
同じぐらいの大きさだったらしく、もっと大きい石にしてはどうかと言ってきた。

私は最初に持った石よりも少し大きい石を持ち、穴へ投げ入れた。
すぐに石はスゥーと闇に吸いこまれた。

「ほらね」

私よりも先に穴を覗いていた例の人に話しかけられるまで、私はずっと穴を眺めていた。
本当に音が聞こえてこない。

音が聞こえないほど深いのか、不思議なこともあるものだ。

しばらく穴を見つめてはいたものの、穴は穴。
ただ見ているにも限界がある。
飽きてしまった私はその場を去ろうとした。

「おや、何か聞こえてきましたよ」

私が穴から離れていくのも気にせずにまだ穴を覗いていた人がそう言った。
私はすぐさま穴へ駆け寄った。

「人の声が聞こえるよ」

私も耳を澄ましてみると、たしかに助けてくれと声が聞こえる。
さらに聞き続けるとついさっき穴から落ちたという。

「私はここに1時間以上前からいるが、ついさっき落ちたというのかね」

そこで私はふと思った。
穴が深すぎて声だけが遅れてやってきているのではないかと。

――石が投げ入れられる前の声が。

私の手にはまだずっしりと大きい石の感覚が残っていた。
スゥと消えた石の残像もまだまぶたの裏に残っている。

だからといってどうなるのか。
いまさら考えてどうなるのか。

吸い込まれるように穴を見つめたまま考え込んでいた私が異変に気づくと、
穴を覗いていた人は真っ青な顔をしてこちらを見ていた。

彼の形相はすさまじく、それは自分のした行いというよりも、私へ向けられているようだった。

「私は小石を投げただけなんだ」

そういうことらしい。
彼もすべてを知った。
しかし罪は私だけにあると。

私は彼の投げた石の大きさを知らない。
彼は私の投げた石の大きさを知っている。

私はどうすればいいのか。
こうするしかないだろう。

私は彼を穴へ落とすと、見つけられるだけたくさんの大きい石を探してきては、
穴に投げ入れた。

これでしばらくは私も彼のように穴を覗いていなくてはならなくなった。

あの音がしなくなるまで。



おわり

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